京 楽 點 画

吉井 勇   


   

  

京住みのゆゑにかあらむ回顧癖(くわいこへき)つのりて ゆくをあはれとも見つ

紫陽花忌(あぢさゐき)とは多佳女忌(たかぢょき)のことなるか あはれあはれと思ひ目つぶる

今日もまたわれは通りぬそのむかし 狩野元信(かのうもとのぶ)すみけるところ

夏ちかき京の逵(つむじ)に往き逢ひし 祇園老妓(ぎおんらうぎ)のものの言ひやう

わが留守に粽(ちまき)の壽司(すし)が届きゐぬ 京のひと日はかくておもしろ

拗ねものの無腸翁(むちゃうおきな)のざれ書きの文字を 愛でつつ京住みぞする

出雲路の旅にて得たるぼて茶碗見つつしあれば慵(もの)うからむか

去年食(こぞは)みし豆飯の味おもひつつ 八幡法師(やはたはふし)に消息をする

夕ぐれまでに片附けものをする妹(いも)の うしろ姿も梅雨曇(つゆぐも)りして

世を去りし祇園蘇小(ぎおんそせ)のいくたりを 思ひ出しぬ夜半の寝覺めに

→ライブラリーに戻る